夢幻泡影(むげんほうよう)という言葉をご存知でしょうか?
意味としては「人生や世の中の出来事は、はかないということのたとえ。」とあります。
熊本では、今年も桜が散ってしまいました。
時の流れは残酷で、気付いたらあっというまに歳をとっています。
今できることは、今やる。
できる限り。
ネガフィルム現像が済んだら、やはりプリントしたいと思うのが人間の心理というもので。
今回も前回に引き続き、モノクロ方面のお話。
モノクロのプリントについてです。
使用する機材
引き伸ばし機 LUCKY 90M-S
私がモノクロプリントに用いている引き伸ばし機はLUCKY 90M-Sという引き伸ばし機。
モノクロプリントなので、セーフライトが使えます。暗室といえばのあの赤い光。
こちらの引き伸ばし機の詳しいスペックや例の赤い光(セーフライト)については前回記事で書いていますのでそちらをどうぞ。
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引き伸ばしレンズ EL Nikkor 50mm f2.8
私が感じたこの引き伸ばしレンズの特徴としては、シャープにカリッとプリントが仕上がる印象。
モノクロの35mm判フィルムをプリントする時はFujinon EX 50mm f2.8やRodenstock YSARON 50mm f3.5ではなく、たいていこのレンズを使っています。
引き伸ばしタイマー・引き伸ばし電球
使用する引き伸ばし電球はLUCKY純正の100V-150Wのものを使用しています。
こちらの引き伸ばし機では変圧器は必要ありません。
LPL イーゼルマスク
印画紙を固定しておく機材です。
私が使っているものは二枚羽根で、四切の印画紙まで使用できます。
こちらのイーゼルマスクのちょっとした使い方についても然り、ここからの機材は以前投稿の記事、カラープリント①に載せています。
気になる方はそちらもチェックして頂けると嬉しいです。
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なので、ここからは違う部分だけ簡単に機材を紹介。
引き伸ばしルーペ Peak Ⅰ型
印画紙に露光する際に、像のピントを合わせるのに使用します。
今回はモノクロプリントなのでこのフィルターも使っていきます。
詳しいことはこちら。
薬品
今回はモノクロプリントなのでその薬品を。
処理液2L作っていきます。
現像液
- 富士 コレクトールE
AとBの粉末の薬品が2個ずつ入っています。
処理液の作り方は、袋表紙部分に記載されています。
1L作る場合
約40℃の温湯500mlを撹拌しながらA1袋の薬品を徐々に投入し完全に溶かします。
↓
B1袋の薬品を徐々に加えて完全に溶かして原液とします。
2L作る場合
約40℃の温湯1LにA・B各2袋を1L作成した時と同じ方法で完全に溶かし原液とします。
使用する際は、原液 1 : 水 1 で希釈して使用液とします。
コレクトールE 原液 1L : 水 1L
停止液
- 富士酢酸
停止液といえば、毎度おなじみ富士酢酸。
1Lの水に30mlの富士酢酸。
2Lであれば60mlの富士酢酸を投入し処理液とします。
富士酢酸 60ml : 水 2L
定着液
- 中外マイフィクサー
マイフィクサー | 水 | |
5L | 1L | 4L |
1L | 200ml | 800ml |
2L | 400ml | 1600ml |
後継品。
印画紙 ILFORD MG4RC 1M 9.5X12
今、私が使用している印画紙はこの3つ。全てILFORDの印画紙で多諧調の光沢紙。サイズと紙質が異なります。
印画紙のサイズは大カビネや六切、四切などのこと。
光沢紙とは印画紙の面上のことで、他にも半光沢や無光沢など種類は様々。
特に重要になってくるのは、単階調と多階調という階調の幅の選択肢。
それと、RCとFB(バライタともいう)という紙質の選択肢。
単階調と多階調という階調の幅の選択肢
単諧調印画紙は、号数というものがすでに決まっており、その号数の調子でプリントが仕上がります。
要は軟調にするか硬調にするかを、「いざプリントするぞ!」って時に選択できないということです。
じゃあ単諧調より多諧調がいいじゃん!となりそうですが、私個人の意見としては、単諧調印画紙でプリントした写真の方が、調子が自然できれいに仕上がっている感じがします。まぁ結局好みなんですがね。
多諧調印画紙は多諧調フィルターを使うことで、プリント時に軟調に仕上げるか硬調に仕上げるかを選ぶことができます。
軟調のフィルターと硬調のフィルターを組み合わせて使うスプリットグレードプリントなどの手法もあるので、表現の幅・プリントの自由度はこちらの方が高いと思われます。
RCとFB(バライタともいう)という紙質の選択肢
こちらは私の主観ですが洋服でいうポリエステルと綿のようなイメージです。
RCはポリエステルのイメージで、水を通しても伸び縮みも少ないですし、乾きやすさの面でも優れています。
FB(バライタ)は綿のイメージで、ポリエステルに比べると伸び縮みが大きく乾きにくいですが、よい風合いや雰囲気を持っている。
ざっくり言うとこんなイメージです。
他にも、普通のモノクロ(白黒)調の純黒調、若干青っぽく仕上がる冷黒調や若干赤っぽく(セピアのような感じ)仕上がる温黒調など、印画紙一つにしてもこれだけ選択肢があります。
そんな中で今回はILFORD MG4RC 1M 9.5X12(9.5×12インチ・光沢紙・純黒調・多諧調・RCペーパー)にプリントしA4サイズにカットしていきたいと思います。
このILFORD MG4RC 1M 9.5X12。
販売終了し、後継品がでています。
プリント手順
セッティング
引き伸ばし機 LUCKY 90M-S
引き伸ばし機左部分にあるグリップハンドルを握り高さ(倍率)を調節します。
ピントの調節には、引き伸ばし機右部分にある横回転のダイヤルを回すと蛇腹が伸び、引き伸ばしレンズが繰り出しピントを合わせる仕組み。
LUCKY QE69と異なる点は、ダイヤルが横回転なのとこれ1つしかついていないということ。
なので、大幅な繰り出し戻しが必要な場合は若干時間かかります。
LUCKY QE69のように高さを示すものがないので、私はメジャーのようになっているマスキングテープをLUCKY 90M-Sの支柱に張り付けて、倍率とピントのよい兼ね合いの高さを記録しておき、毎回この調整の作業を短時間で済むようにしています。
引き伸ばしレンズ
多諧調印画紙なので多諧調フィルターを使用していきます。
私が使用しているのはFujiのVGフィルター。某オークションサイトで購入したもの。
フィルターを乗せるホルダーもついています。
取付完了した引き伸ばしレンズに装着していきます。
とりあえず適当にチョイスして並べてみました。
左がこのフィルターの中では、最も軟調に仕上がるフィルターで、右にいくにつれて(数字が大きくなるにつれて)硬調な仕上がりになっていきます。
ちなみに、次はイルフォードの多諧調フィルターを検討中!
セット完了!
イーゼルマスク
9.5X12インチは24㎝×30.5㎝。
余白は5mm。最終的にA4サイズになればいいので画像を真ん中にする必要性はありません。
なので、厚紙は使わずにいきます。イーゼルマスク上でいうと20㎝×28.7㎝のところ。
ネガフィルム
ネガをネガキャリアに挟みます。
この時、LUCKY QE69(散光式)の時よりも注意深くほこりや塵がついてないか確認しておきましょう!
LUCKY 90M-S(集散光式)はLUCKY QE69(散光式)に比べるとプリントした時のほこりや塵が目立つので注意が必要です。
薬品
作成した処理液をバットに入れていきます。
ちなみに、保存はこんな感じ。ポリ瓶に入れて、しっかり蓋をして。
完了!!
その他
現像液の処理温度は20℃で90秒、処理能力としては皿現像・カビネ(Fuji WP印画紙の場合) 200枚/Lとのこと。
これもコレクトールEの袋に記載されています。
ということで、タイマーと温度計はそれで。
露光
EPSON GT-X900でスキャン。
このコマをプリントしていきます。
前回記事モノクロネガ現像①のネガをプリントしていくので、今回も露光時間はあてにならないと思いますが一応。
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フィルム 35mm判
レンズ絞り f8
フィルター 2号
露光時間 8分
現像浴(約20℃) 90秒
↓
停止浴(適当) 30秒
↓
定着浴(約20℃) RCペーパーなので30秒
↓
水洗 約5分 流水で時折水を入れ替えながら洗っていきます。
↓
乾燥
薬品は全て2L
印画紙は小四切(仕上がったプリントをカットしA4にします。)
※何度かプリントし、最もよかったと思うデータを載せています。
仕上がりとまとめ
今回の写真を撮ったカメラとレンズとフィルムは前回記事モノクロネガ現像①と同じ。
[Asahi pentax kx /smc takumar 50mm f1.4 /Fujifilm neopan acros 100]です。
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- ネガスキャンとの比較
とにかく露出過多!いい天気だったとはいえ。露出を読み違えました。
標準的なネガを狙って撮影したのに露光時間8分必要なネガはいただけません。
プリントしてみて気づくこともあります。
まぁ自分でプリントするんで焼き直して、それなりの写真にはなりました。
自宅暗室のメリットですね~!!
このネガをお店でプリントに出したらどんなプリントになって帰ってくることやら。
余談ではありますが、自宅暗室を始める際、こちらの書籍に非常にお世話になりました。
今でも見返しては勉強させてもらっています。
今回記事と前回記事もこちらの書籍を参考にさせてもらった部分がありますので、参考文献として挙げさせて頂きます。
参考文献
[樋口肇一,1996年,『モノクロ写真の現像とプリント112』,株式会社 日本カメラ社]